ルミエラ ストーリー

EPISODE1

聖域の守護聖女ルミエラ
「アルマよ……世界は広い。見に行こうではないか?絶対行くからな。止めても無駄だ。もう決めたのだ」

教国の最奥、聖域。そこはまさに世界の果て。海と天とが融合し、高濃度エーテルで充ちている。
伝統的な聖域守護者の家系に生まれ育ったのが彼女である。抜きん出た才があり、次代の聖女と名高い。
まだ年若いが、国家の信仰儀式一切を滞りなく行う。
しかしひとたび職務を離れると、実年齢よりもはるかに幼いような、おてんばさや勝ち気さが垣間見える。

「ああ、この術は少々元気が出すぎるから注意せよ」
ルミエラは特殊なエーテルシールドを作成することができ、そのシールドがあればゼーレタクトや機神の暴走を防げる可能性が高かった。
だが彼女は、聖女としての使命からではなく、ただ世間への好奇心から、旅団への同行を自ら言い出した。

EPISODE2

聖女ってなに?
「そうだな。生まれながらの才能と、後天的学習……あと必要なのは自分のかわいさ! かもしれん!」

聖女とは何か、だと? それは私が聞きたい!
みんなからはどういう風に思われているのだろうな!
私は歴代の中でも一番聖女らしくない聖女だそうだがいったいどういう意味なのだ、アルマよ?

えーと……教国における伝統的聖女の話をひとまず。
聖域のフォノ神殿の巫女たちを束ねる存在が聖女だ。
巫女は大陸各地に布教や巡礼に行くことがあるが、聖女は基本的に聖域から出ず、聖域で年中祈っている。
何か女王蜂と働き蜂みたいな関係だな。ふふふ。
聖女は教国の政治上でも法王一族に次ぐ権限を持つ。
何しろこの国は、人の気持ちを集めることが大事だ。
国防の『心の壁』のみならず、人の思いとエーテルが動かす古代機構が経済産業の原動力。教義は大切だな。

聖域の守護者は幾つかの家系があって、まあ誰が次の聖女の役割になるかは、持ち回り。今回は私の家だ。
エーテル操作に関する才能は生まれつき必須とされるが、祭事やら礼節についてはどのみち聖女候補となってからあれこれ覚えさせられる。はあ。めんどくさい。

EPISODE3

聖域の日常
「朝は早起き。昼は寝る。そして晩飯はゴージャスに。私にとってはこれがフツーのことだ」

普段の聖域では何をしてるかって?
別に面白くもないからアルマにでも聞いておくれ。
……と言いたいが、うーん、そうだな……

朝の礼拝では巫女や聖女は、国民全員ひとりひとりのことを思い浮かべながらエーテルの安定を願うんだ。
順々に、全員だぞ? 覚えてなくて誰か飛ばしたり忘れたりすると、災いが降る。巫女は責任重大だな……だが私はいじわるな宰相の名前を時々忘れるんだ。ふふ。

巫女たちと違って聖女は昼は瞑想をし、エーテルの充満した気配から運命を読み取るのが仕事のひとつだ。
お告げを待っている人々に、道を示さねばな。が……時々意味不明な神託を告げて申し訳ない。
私も何をどう言葉にすべきかわからないときがある。

晩飯はなかなかうまい。質素倹約を重んじる聖域の暮らしでも、夜の料理だけはじっくりと手間を掛ける。
巫女たちもささやかなぜいたくをいつも楽しみにしているよ。アルマは神殿の予算を節約しろとうるさいが。

EPISODE4

外世界への思い
「アルマよ。聖女の私も、職を離れればただの少女だ。たまにはどこかに出かけてみたいのだ、連れて行け」

巡礼から戻った巫女から、各地の様々な話を聞く。
古今の書物からも、あらゆる知識を仕入れる。
それがエーテルの脈流から運命を知り、それを告げる聖女としての必然たる教養だ。だが、しかし……

神託を求めるどんな旅人の相手をしようとも!
どんなに面白い諸外国の話を聞こうとも!
この私自身は、聖域からほぼ一歩も出られないのだ!
なんというナマゴロシだろう! おい、アルマ!!
お前が騎士団を束ねる白騎士だと知ってて頼むんだが連中の目をコッソリ盗んで、また私を近くの廃棄鉱山あたりまで連れて行ってくれないか!?
息抜きだよ、い・き・ぬ・き! リフレッシュだ!
たまには薄いエーテルのところまで連れて行け!
気の重みを感じずに、思う存分走り回りたい!

……なんだ、なぜダメなのだ? 私は行くと言った。
今日のおつとめはもう終わったんだし、聖域に聖女が閉じこもってる理由なんてないだろう。とにかく行くって言ったら行くの! もう私ひとりでも勝手に行くぞ?

EPISODE5

古い伝承への危惧
「昔話をしよう。伝承の真偽は私もわからん。しかし、懸念は持っておいてよかろう」

昔話をしよう。そうだな……青の国の歴史家の推測では、およそ2万年前のことだ。想像しがたいが。

当時は『機神』と呼ばれる、神々の模造品……神の姿だけを借りた偽の、機械の神が地上を闊歩していた。
その偽の神は、古代人が作った。エーテルが乏しかったこの大陸に入植してきたその古代人たちは、今のこのエマーグとは全然違う文化と技術を持っている連中だ。
そして彼らはエーテルをどこからか導き出して、大陸に定着させた。
この『どこからか』のヒントは次元ゲートにあるようだな。帝国はこのゲートや偽の神の研究に、躍起だ。
大陸を覆いつつあるエーテル異常に対して、帝国軍は古代機構を真似た機械で対抗しようとしている。

まあ、機械や機構の性能なぞは私にはわからんが。
偽の神のさらに偽物を作って、どうするのやら。
だいたいなぜ、その2万年前の入植者の生き残りが今この大陸には皆無なのか、気がつかないのだろうか。

彼らは皆、殺されたのだよ。自ら作った偽の神に。
伝承によればな。
やがて偽の神は地底で眠りについたが……今、また過ちが繰り返されるような予感が、私にはしてならん。

EPISODE6

旅路の好奇心
「私は聖女としての使命を背負って出かけるのだ!……で、おやつはどのくらい用意していけばいい?」

青の国の地下の、偽の神々はもう目覚めただと!?
それを早く言え! ええいアルマ、出かけるぞ!
聖女には偽の神の冒涜から民を守るつとめもある!
だから私を青の国に、現地に行かせろ!
なんの、我が身の危険などかえりみていられるか!

え……? 青の国はもう落ち着いてるけど、機神の繭を帝国軍に持ち去られた? それも早く言わんか……
じゃあ、どうする、アルマ。繭の覚醒は阻止したい。
機神があるのはおおかた新首都か、または次元ゲートだろう。ゲートのエネルギーは機神を目覚めさせるには良いらしいからな。ひとまずゲートを目指すか。
ゲートならば、そう遠くない。もっとも近いゲートのある帝国旧都は、せいぜい2日もあれば到着できる。
こちらには発掘旅団の陸上帆船もあるしな。

……なんだアルマ。ちがうぞ。私は別にお船に乗りたいから旅団と一緒に行きたいわけじゃない。毎夜おいしいごちそうが振る舞われる旅団がうらやましいわけじゃないぞ! そうじゃない! ただ旅が! 楽しそう!

EPISODE7

元気になる秘術
「異世界の巫女は、明るく元気に、おしりをふりふり歌うとか……その真似事を、たまにはしてみるか!」

はいはい! シズマと発掘旅団とその仲間たち!
頑張ってるかー? 私が聖域の聖女ルミエラだ!

うん。よし。全体的にいい返事だな。
それにしても帝国軍は、しつこい。超しつこい。
私たちがどこに行こうとも見つけてくる。
次元ゲートへの強行突破を試みた私たちを、やはり軍は追ってくる。
予想通り、砲弾が雨あられと飛んでくるじゃないか。

だが、私の譜術・絶対防御令が間に合ったな。
このエーテルシールドは、旅団の陸上帆船すべてを包み込み、いにしえの光線兵器さえもはじくのだ……
我ながら、すごい技だな!
そしてほとんど被害を受けることもなく、皆揃って、軍のイセリア技官の追跡を振り切った。

さて一同、ようやくキャンプができそうだな。
走り通しでくたびれただろう? 元気を出そうか。
食事の振る舞いなどはフィーネにまかせるとして、私は……そうだな、歌と踊りを披露しよう。異世界には、あいどるという巫女がいて、それの真似事の譜術だ。
だが、この術は元気になりすぎるから、皆注意せよ!

EPISODE8

聖女ならではの愚痴
「なあアルマ、聞いておくれよ。前々から思うが……私のこの聖女の伝統装束、重くないか?」

頭に被ったヘッドセットが儀式や施術に重要だということは熟知している! けれど首を回すと疲れるんだ!
え? これでも特注で私専用のサイズと軽さだって?
そうなのか、ローブも……でも、やっぱり重いぞ。
代々受け継がれてきた杖も大きくて持ちにくい……いや、これは私の身体がちょっと小柄なだけなんだが。
身長、今からでも伸びないかなあ……
もう少しこう、すらっとした感じになりたかった。
オトナのオンナに見せたいんだ。
お胸も、もう少々だけサイズが欲しくてだな……
そのほうが聖女の威厳があり、カッコイイだろう?

ええい、うるさいぞアルマ! 私だって乙女だ!
聖女だって、かわいいおんなのこなんだから!
たまには声をあげて主張したくなるんだ……普段は仕事一辺倒だしな。だが聖女は聖女の任にある間、貞節を守り通すのが伝統……わかっている。

ただ、その……幼馴染みのグレンは、どう思うか……とか。たとえばの話だぞ、アルマ。あくまで。

EPISODE9

聖女たちの危機
「敵の新兵器だ! 突撃中止! 部隊が決壊するぞ!みんな下がれ、下がってくれ……!」

こんなはずではなかった。私にも過信があった……
私の譜術・絶対防御令は、この身に受け継がれた伝統の技。その名の通りに何事にも破られない、究極最強の盾だと思っていた。
だが、ついに、そしてあっけなく、エーテルシールドは破壊された……私の目の前で。
あれが帝国の最新兵器テトラコルド改の脅威か!
確かに民が皆、あの兵器に恐れおののいていたが……
エーテルの存在自体をねじ曲げてしまうような大量破壊の振動と光……あんなものを、よくも……

発掘旅団を中心に集まった有志の戦士たちは、皆勇敢だが、軽装だ。しかし我が譜術の加護により、あの次元ゲートを巡る激しい攻防にも耐え抜いてきた。
けれど今、帝国の新首都に居並ぶ敵の大軍の砲火に、シールドの加護を失ったまま、晒される……!
やめるのだ! たとえ他の誰かを守るためであってもその身を捨てるような突撃はよすのだ、戦士たちよ!
ああ……なんということだ……これでは……
私の力への過信が、彼らに全滅の危機を招くのか。

EPISODE10

反撃する聖女
「やってみせよう……さあ、新たな私の防御令だ!敵に絶対の盾が通じなくとも、この万能の鎧なら!」

人が戦いで死ぬのを、私は初めて見た。
それもあまりに数多く、一度に。
私は自分の造り出すエーテルシールドに頼りすぎ、彼ら戦士に無茶をさせてしまった……
敵に向かい、そのまま戻ってこない者たち……
彼らのことを思えば、私にも大きな悲しみ、怒りが。
そして、やるせなさが渦巻く。

……泣いてばかりいられない。あのグレンも、青の国の悲劇を背に、立ち上がったではないか。
アルマよ! もしも私がまだ気を落としたままならばいっそこの頬を力一杯叩いて、目を覚まさせてくれ!
この瞬間に私に必要なのは涙ではない! 勇気だ!
そして敵に対して、工夫をしてやろうではないか!

絶対防御を打ち破る破壊の波長を持った兵器を、敵が擁していることは、もうわかっている……ならば!
破壊に耐える盾ではなく、攻撃を吸収する鎧を使え!
私のこの、エーテルと通じ合う力をもって、この場で鎧をたちまち作り上げ、皆に配り与えるとしよう!

EPISODE11

聖女の旅は続くよ
「さあ、まだ見ぬ土地に私を連れて行け、アルマよ!発掘旅団と共に、エマーグすべてを巡礼するのだ!」

帰るぞ、アルマ。ここでの私の、聖女としての仕事は終わった。帝国軍も間違いに気づき、もうエーテルを人為的に操るための争いなど、二度と起こさんだろう。

機神トールは、光の中の異世界へと去ったのか……
そしてシズマも、どこに行ったのか……
だがきっと、彼らも帰るべき場所を目指した。
それは不幸ではなく、喜びに繋がるに違いあるまい。

何……アルマ、まだこの空を飛びたいのか?
聖域の濃いエーテルの中へと、戻らなくていいのか?

よし! よくぞ言った! 私も同感だ!
今しばらく、私も旅団たちと共に旅を続けるぞ!
大陸の各地は、軍の誤った行動の爪跡により、まだ傷ついているだろう? その癒しを、巫女ばかりに任せてはおれん。この聖女自ら、率先してやろうではないか。
……なんだアルマ、違うぞ。私は別に各地の珍しいものを見たり、おいしいものを食べたくて旅行に行くわけじゃない。本当だ! でも、ああ……! 楽しみだな!

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