鬼蝮ユリア ストーリー

EPISODE1

グミドル:鬼蝮 ユリア
「愚民のアイドル、ユリアちゃんでぇ~~~す!みんなの力で、世界をアキバにしちゃお~~!」

圧倒的な統率力を誇る、女王の国がアキバにある。
愚民たちの女王の名は、鬼蝮ユリア。
女王の目的は、東京をアキバ化すること。
そしてゆくゆくは、この世界の果てまでもアキバとすることである。
彼女の歌は、恍惚と陶酔をもたらす、素晴らしい電波が含まれている。
この歌を、あまねく世界に広めることが、国民である愚民たちの使命。
愚民たちは、女王の号令とともに、動き出す。
この素晴らしいアキバを、世界の王国にするために。

「愚民のアイドル、ユリアちゃんでぇ~~~す!
みんなの力で、世界をアキバにしちゃお~~!」

EPISODE2

すべてはアキバからはじまる
「ユリアは決めたんだ。もう東京ぜんぶ、アキバにしちゃうっ!」

みんな、知ってる~?
うんうん、愚民のみんななら、当然知ってるよね。

アキバって、この世の楽園なんだよ。
でもね、でもね。
愚民のみんなは、苦労してるよね?
買い物に行ったら、財布とられて。
念のため武装したら、武器を没収されて。
黒い服装と黒い髪っていうだけで、後ろ指さされて。

傷つくよね?
観光するだけの、興味本位の人たちの攻撃……
おっきなリュック背負ってても、防げないよね?

だからね、ユリアは決めたんだ。
もう、東京ぜんぶをアキバにしちゃうっ!
萌えと二次元で、東京を支配するの!

誰もやらないから、ユリアがやるよっ!
……別に、今働いてるメイドカフェが潰れかけてるからとか……そんな理由で、やるんじゃないからね!

さぁみんな、ユリアと一緒に立ち上がろ~~~!

× × ×

そんなユリアを、冷静な目で見つめるひとりの男がいた。
彼は、アキバの住民ではない。
ただ、通りかかっただけの普通の男。
しかし彼は、ユリアの演説に心を魅かれた。
彼女が果たして本当に、この東京を支配できるのか。

彼は、ユリアの動向を見守ろうと決意した。

EPISODE3

アキバ統一戦
「さあまずは、このアキバをわたしたちの手に取り戻そ~!!」

愚民のみんな~、集合して!
さあ、どこから始めよっか!
え? シブヤ?
ムリムリ、それは最後でしょ~!
あそこにはね、ギャルっていう強敵がいるんだから!
そんなことよりまずは、アキバの統一!

……え? どうすれば統一できるのかって?
そんなの、決まってるでしょ!
駅前の某アイドル劇場さえ支配すれば、アキバの統一は成功したも同然だよ~~~!
え? 本当に勝てるのかって?
心配しないで! 
ユリアたちが立ち上がる時を、待ってる人がいるの。
アキバデパートには、蜂起の時を待っている古参兵がたっくさんいるんだよっ!
さあまずは、アキバをわたしたちの手に取り戻そ~!

× × ×

男は、ユリアを見つめていた。
彼女は、何をしているのか?
自分の目には、ただドネルケバブの屋台の前で歌っているだけのように見える……
確かに、歌っている彼女は楽しそうではあるが。
これが、アキバ統一の第一歩なのか?
ここからはたして、どういう展開が待っているのか?

彼はますます、彼女から目が離せなくなった。

EPISODE4

ウエノ攻略戦
「大丈夫っ!パンダたちも、味方だよ~~~!」

愚民のみんな~~~!
みんなの力で、アキバ統一は成功したねっ!
でもね、本番はここからだよっ!
次はもちろん、ウエノを攻略しま~す!
ん~とね、ここでの強敵は……
萌えとか理解してくれない、ゲージュツ家の軍団!
なんだか、おっきな大学があるんだって。
そこを攻略すれば、ウエノを制圧したも同然っ!

……え? 作戦はあるのかって?
大丈夫で~す!
実は、アサクサのサンバ軍団のみなさんが、ユリアたちの味方になってくれるそうですっ!
サンバのリズムで、ゲージュツ家たちの感性を狂わせて萌えを注入しちゃうよ!
大丈夫っ! パンダたちも、味方だよ~~~!

× × ×

男は、不可解な気分でユリアを見つめていた。
……おかしい。なぜ上野へ?
どうも彼女は、すでに秋葉原を統一したつもりのようだ。
いや、屋台の前で歌っただけではないか……!
そして、上野まで攻略範囲を広げたようだが……
今、自分の目に映っている彼女は、上野公園博物館を出て、そのまま動物園を散歩しているだけようにしか見えない。
例によって、楽しそうではあるのだが……
彼は引き続き、彼女を見守ることにした。

EPISODE5

池袋への進撃
「フジョシたちに、アキバの萌えを注入したいと思いますっ!」

よお~し、愚民のみんなっ!
今回の相手は、イケブクロ。
かなりの激闘が予想されるから、覚悟しておいてね!
もちろん、みんなも知ってると思うけど……
ここにはね、『乙女ロード』に巣食うフジョシという難敵が存在しているの。
でもね、安心して。
彼女たちも、本質的にはユリアたちと一緒。
ただ、ベクトルが違うだけだと思うんだ。
だからね、まずは彼女たちの好みを一度リセットしてそれから、アキバの萌えを注入したいと思いますっ!

……え? そんなこと、不可能だって?
大丈夫で~す!
スガモの賢明なご婦人たちが、彼女たちから『腐』を除去して、ただの女子に戻してくれるそうですっ!
そしたらもう、相手はただの女の子。
この戦い、ユリアたちの勝利はまちがいなしっ!
ついでに、サイタマも支配しちゃおう~~~!

× × ×

男は、ユリアを凝視していた。
上野を制圧したつもりになっている彼女は、池袋まで意気揚々と来たものの……
やっていることといえば、都電に乗ってはしゃいだり芸術劇場前で、奇妙な踊りを披露しているだけだ。
これで、池袋を制圧できるとでも……?
それとも、自分が誤解しているのか?
実はこうしている間にも、池袋の攻略は進んでいるのだろうか?

彼はこれからも、ユリアを見守る決意を固めた。

EPISODE6

新宿の攻防
「みんなの力で、トチョーの人たちをきゅんきゅんさせちゃおうっ!」

愚民のみんな~、息してる~~~?
とうとう、シンジュクまで来ちゃいました!
ここにはね、トチョーっていうところに、アタマの堅い人たちがいるんだって!
ここを攻略せずして、東京が支配できようかっ!

……え? 味方の人数が足りないって?
大丈夫で~す!
アキバの同盟都市・ナカノから、一騎当千の勇者が中央線に乗って、続々とこっちに向かってるよ!
みんなの力で、トチョーの人たちを、きゅんきゅんさせちゃおうっ!

× × ×

男は、相変わらずユリアを見つめていた。
どうやら、池袋も攻略したつもり(ついでに埼玉も)の彼女は、ここ新宿に到着した。
よりによって、都庁を攻略するなどと怪気炎をあげていたが……現実の彼女はどうだ。
周囲の人々から、『歌舞伎町』という名前が出ただけで恐怖のあまり、後ずさりしていた。
そもそも、迷ったのか西口にもたどり着けなかった。
そして今、彼女は新宿御苑でのんびりしている。
これから、何か起こるのであろうか。
……いや、きっと起こるまい。例の如く。

それでも彼は、ユリアについていくことを決めた。

EPISODE7

そして品川へ
「じゃあ次は、シナガワに向かいますっ!え? オオトリイ? どこだっけ?」

愚民のみんな~! ユリアについてきてる?
え~と、ユリアたちは今、シナガワに向かってます!
え? シブヤを飛ばした?
だから、シブヤはラスボスなんだってば!

どうしてシナガワかって?
だって愚民のみんな、働きたくないよね?
ここにはね、愚民のみんなの気持ちなんて、ちっともわからない、キギョウ戦士って強敵がいるの!
敵の数は多いけど、大丈夫!
だって今、各私鉄沿線に散らばる仲間たちが、続々と車庫跡地? ってとこに向かってるらしいよ!
だから、ユリアたちの勝利は間違いなし!
ついでに、シナガワ周辺も制圧しちゃいましょ~!
え? オオトリイ?
どこだっけ? そこって神奈川だよね?
うん、そこは外してOK!
じゃ、行きましょ~~~!!

× × ×

男は、疲れていた。
新宿から品川へ向かっているはずのユリアであったがどうやら、電車の乗り継ぎがわからないらしい。
六本木や三田を、場違いな雰囲気を醸し出しながらも悠々と闊歩している。
そんなユリアを見つめながら、彼は自分が何をしているのか、よくわからなくなっていた。

だが彼ももはや、後には退けなくなっていた。

しかし……
大鳥居は東京のはずだ。
……いや、自信はないが。

EPISODE8

サラリーマンの聖地・新橋
「次の相手は、アルコールでパワーアップした スーパーキギョウ戦士だ~~~!」

 愚民のみんな~! シナガワの戦い、大変だったね!
で、次はシンバシを制圧しますっ!
あそこにも、シナガワと同じで、キギョウ戦士たちが
バカみたいにたくさんいるんだよ~!
しかもね、アルコールの力でスーパーキギョウ戦士にパワーアップしている連中が、たくさんいるって!

……え? それじゃ手に負えない?
大丈夫で~す!
こんな時のために、オダイバに潜ませておいた伏兵が続々と、ゆりかもめに乗ってこちらへ向かってるって!
ここを支配できれば、またアキバが見えてくるよ!
もうひとふんばり! がんばりましょ~~~!

× × ×

男は、和んでいた。
目の前の平和な風景に。
そう、ユリアは新橋駅前でSLを眺めながら、ランチの時間を楽しんでいるのである。
その嬉しそうな表情を見ると、これまでの蓄積された疲労も、体から消えていく。

彼にとって、ユリアはもはや癒しの存在であった。

EPISODE9

東京ダンジョン
「このダンジョンをクリアしないかぎり わたしたちの勝利はないんだからっ!!」

愚民のみんな、しっかりして!
ここで迷ったら、おしまいだよ!
……え? 心配しすぎだって?
ちょっと、このトウキョウ駅の地下ダンジョンをなめたら、痛い目にあっちゃうよ!
このダンジョンをクリアしないかぎり、わたしたちの勝利はないんだからっ!!
そして、このダンジョンを抜けた先にある……
国家ケンリョクとやらに、打ち勝つんだからっ!!

× × ×

男は、感慨深げであった。
ついに、東京駅まで来たか。
ここで彼女は、国家権力までも敵に回すつもりか……
だが、余計な心配だったようだ。
彼女が東京駅の地下で迷って、すでに1時間経つ。
半べそをかいている彼女の様子を見る限り、適当な路線でここから出るに違いない。
うっかり京葉線に乗らねばよいが……

彼は目を細め、半泣きになっているユリアを見つめていた。

EPISODE10

渋谷決戦
「ギャルたちに告ぐっ! 己の内なる萌えと、二次元愛に気づきなさい!」

愚民のみんな……
いよいよ、ここにたどり着いたね。
とうとう、最終目的地・シブヤに……!
みんなも知ってると思うけど、もともとシブヤはアキバと並ぶようなオタクの聖地だったんだよ。
いわば、これは聖地を取り戻す戦いなの!
もう、ここでは小細工は通じない。
ユリアの熱い演説で、この街を変えてみせるからっ!
さあ愚民のみんな、ハチ公前に集合してっ!

我が物顔で、シブヤを闊歩するギャルたちに告ぐっ!
あなたたちの価値観の転換を要求します!
己の内なる萌えと、二次元愛に気づきなさい!
そしてこのシブヤを、再び聖地に!!
そう、聖地に! 再び二次元愛を! 萌えを!!
気づいて、みんな……うう……

× × ×

男は、演説に聞き入っていた。
ユリアは演説の途中で、感極まって涙を流している。
その姿に、彼もまた涙した。
ここは、渋谷ではない。
代々木公園である。
そう。ユリアは、渋谷に足を踏み入れることができなかったのだ……
だが、それがなんだというのか。
もう、自分の心に間違いなくアキバは存在している。

彼は間違いなく、ユリアの虜となっていた。

EPISODE11

ユリアの野望(世界版)
「……というわけで、東京アキバ化計画せいこうっ! 次は世界っ! ユリアと一緒にいってみよ~~~!」

愚民のみんな……ついにやったね。
ユリアたちは、成し遂げたんだよ!
これから東京は、秋葉原と名前が変わります!
東京アキバ化計画は、だいせいこうっ!!

まだ、アキバスーパーアリーナはできてないけど……
たぶん時間の問題だから、ちょっと待ってね。
しばらくは、アキバ武道館で我慢してほしいなっ。

でもまだ、ユリアのおなかはいっぱいになってない!
次は日本を飛び越えて、世界っ!
世界中を、アキバにしちゃうんだから!
うんうん、愚民のみんなも、想いは一緒だよね。
じゃあユリアと一緒に、いってみよ~~~!

× × ×

男は、微笑を浮かべてユリアを見つめていた。
彼女は結局、渋谷にもたどり着けなかった。
だが、それがなんだというのか。
彼女は、アキバそのもの。
すなわち、彼女がいる場所が、アキバなのだ。
今、彼女は代々木公園で、世界アキバ化計画について演説を行っている。
次は、世界か……
それも、よかろう。

彼はどこまでもユリアについて行くことを決意した。

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